くまさんソロって何?ドッピオとダブルは同じ?
エスプレッソを始めると、短い単語がたくさん出てきて混乱しますよね。用語は難しい“言葉遊び”ではなく、味をコントロールするための道具です。この記事では、初心者が特につまずきやすい用語を一つずつやさしく、具体的な数字(豆の重さや抽出量、時間)とセットで解説します。読めば「次の一杯」がもっと楽しく、分かりやすくなりますよ。
なぜ「量」を知ることが大事なの?
それは、味は数値で変わるからです。
たとえば、同じ豆でも「豆の量」「抽出量」「抽出時間」を少し変えるだけで、酸っぱくなったり、苦くなったり、物足りなく感じたりします。だから、用語を知って数値感覚を持つと、味の違いを言葉で説明できるようになり、改善もしやすくなります。
基本用語をひとつずつやさしく解説
ショット(Shot)って何?
定義(シンプル):エスプレッソの「抽出1回分」を指す単位です。
家庭での目安(よく使われる値):
- シングル(ソロ)→ 豆量 約7〜9g、抽出量 約25〜30ml、抽出時間 20〜30秒。
- ダブル(ドッピオ)→ 豆量 約14〜18g、抽出量 約50〜60ml、抽出時間 20〜30秒。
※mlはおおむね水の重さ(g)と同じくらいと考えてOK(1ml ≒ 1g)。店や機械によって幅はあります。
よくある誤解:「1ショット=必ず30ml」ではありません。店やレシピにより基準が違うので、「何g→何ml」と書かれているかを見るのが確実です。
ソロ(Solo)/シングル(Single)/ワンショット
同じ意味で使われることが多い言葉です。家庭では「シングル=一回分の抽出(上の数値の小さい方)」と覚えておけば大丈夫。
ドッピオ(Doppio)/ダブル(Double)
意味:シングルの2倍分の抽出を指します。
よくある数値例:豆量 14〜18g → 抽出量 約50〜60ml。
ポイントは「豆量と抽出量が単純に2倍」になることが多い、という点。注文やレシピを見るときは「豆量(Dose)」が2倍になっているかをチェックすると分かりやすいです。
リストレット(Ristretto)とルンゴ(Lungo)
リストレット:短めに抽出するスタイル。抽出量を減らす(例:通常28ml→20ml前後)ことで、より濃厚で甘みを感じやすくなります。
ルンゴ:長めに抽出するスタイル。抽出量を増やす(例:28ml→40ml以上)ことで苦味や渋みが強く出る場合があります。
※どちらも「時間」と「粉の粗さ」で調整します。
ドース(Dose)とイールド(Yield)
- Dose(ドース):挽いた豆の重さ(g)。例:16g。
- Yield(イールド)/抽出量:抽出された液体の量(gまたはml)。例:32g(= 約32ml)。
家庭でレシピを読むときは「Dose → Yield」の形(例:16g → 32g)で書かれていることが多いです。
レシオ(Brew Ratio)/1:2って何?
レシオは「豆量に対する抽出量の比」です。
たとえば「16g → 32g」は豆:抽出 = 16 : 32、比で表すと 1 : 2 になります(32 ÷ 16 = 2)。
家庭向けのよくある目安は 1:2(豆量の2倍の抽出量)。これを基準に、好みで1:1.5(濃め)〜1:2.5(薄め)などに調整します。
抽出時間(Extraction Time)
抽出時間は「ショットを開始して終わるまでの時間」。20〜30秒が目安ですが、粉の粗さや豆量、機械の種類で変わります。短いと酸味が出やすく、長いと苦味が出やすい傾向があります。
粉の粗さ(グラインド)とタンピング圧
- 粉の粗さ:細かくすると抽出が遅く(濃く)なり、粗くすると速く(薄く)なります。
- タンピング圧:粉を押し固める力。押し方がバラバラだと抽出がムラになりやすいです。
調整の順番は「粉の粗さ→抽出時間→抽出量」がおすすめ。粉を細かくする前に、まず抽出時間と抽出量をチェックすると原因特定が楽になります。
クレマ(Crema)
クレマはエスプレッソ表面の泡の層。見た目の指標になりますが、クレマが厚い=必ず味が良いわけではありません。クレマの色や質を見て、抽出が早すぎる・遅すぎるなどのヒントにするのがいい使い方です。
ボディ・フルボディ・ライトボディ
ボディとは:コーヒーを口に含んだときの「重さ」「厚み」「まとまり感」を指す言葉です。ワインの“ボディ”に近いイメージで、口の中で感じる質感を表します。
表現の種類:
- ライトボディ:口当たりが軽く、さっぱりと感じる。
- ミディアムボディ:ほどよい厚みがあり、飲みごたえがあるが重すぎない。
- フルボディ:しっかりとした重みや持続する味わいがある。口に残る余韻が長め。
家庭での見分け方:
- 同じ豆で「抽出量を少なく(濃い)→ボディが強く感じる」傾向があります。
- 「抽出量を多く(薄め)→ボディは軽く感じる」ことが多いです。
- ボディはTDS(濃度)や抽出率とも関係しますが、まずは 飲んだときの“重み”を意識してみましょう。はじめの一口で「軽い」「しっかりしてる」と感じられればOKです。
味との違い:ボディは「口当たりの重さ」で、酸味や苦味は「味のトーン」。同じ豆でも抽出の仕方でボディと味のバランスが変わります。
ちょっとだけ「数値」の話(TDSと抽出率)
TDS(Total Dissolved Solids)=濃度
液体に溶け出した固形分の割合。家庭で計ることは稀ですが、覚えておくとプロのレシピが理解しやすくなります。エスプレッソは濃度が高めで、濃さ(ボディ感)と関係します。
抽出率(Extraction Yield)
豆に含まれる味の成分がどれだけカップに出たかの割合。理想範囲はプロでは約18〜22%と言われますが、自身で作る場合は数値に振り回されず「味で確認」することを優先してください。数字は指標に過ぎません。
用語から味の原因をさかのぼる簡単フローチャート
- 味が薄い → 抽出量(Yield)が多すぎる?/粉が粗い?
- 味が苦い/焦げっぽい → 抽出時間が長すぎる?/粉が細かすぎる?
- 味が酸っぱい → 抽出時間が短すぎる?/抽出量が少なすぎる?
→ まず「Dose(g)・Yield(ml)・Time(秒)」の3点を確認してから、粉の粗さを少し動かすのが簡単で確実です。
レシピ表記の読み方(実例)
例:16g → 32g / 25秒
16g:ドースト(挽いた豆の重さ)32g:イールド(抽出量、mlで表すことが多い)25秒:抽出時間(スタートから終了まで)
この場合、比は 1:2(32 ÷ 16 = 2)で、標準的なバランスのレシピです。
他の例:8g → 24g / 20秒(リストレット傾向)
→ 抽出量が豆量の3倍に見えますが、これは機械や表記の違いの例。必ず「豆量と抽出量の比」を見て判断しましょう。
よく出る略語・メニュー表記の訳(注文時の短いフレーズ)
Solo= シングル(1ショット)Doppio= ダブル(2ショット)Ristretto= リストレット(短く濃い抽出)Lungo= ルンゴ(長く薄めの抽出)
注文で迷ったら:「シングル(ワンショット)でお願いします」「ドッピオでお願いします」と言えば大丈夫です。
用語早見表(すぐ使える一行まとめ)
- ショット(Shot):1回の抽出単位。
- シングル/ソロ:豆量約7–9g、抽出量約25–30ml。
- ダブル/ドッピオ:豆量約14–18g、抽出量約50–60ml。
- リストレット:短め抽出(濃い)。
- ルンゴ:長め抽出(やや薄め)。
- ドースト(Dose):豆の重さ(g)。
- イールド(Yield):抽出量(ml)。
- レシオ(Ratio):Doseに対するYieldの比(例:1:2)。
- 抽出時間:20–30秒が目安(機械・豆で変動)。
- クレマ:表面の泡。見た目の判断材料の一つ。
- TDS / 抽出率:専門的な濃度指標。家庭では味で調整するのが現実的。
おわりに(次にやるといいこと)
用語は「知っておくと便利な道具」です。まずはこの記事の早見表をスクリーンショットして、次に淹れる一杯で豆量(g)・抽出量(ml)・抽出時間(秒)の3つを記録してみてください。たったこれだけで、「今日は酸っぱいな」「今日はちょっと濃いな」と言えるようになり、次にどこを変えるかが自然と分かるようになります。気軽に一歩ずつ試してみましょう — 言葉が味を近づけてくれますよ。



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